決断疲れ

ケンブリッジ大学Barbara Sahakian教授によると、人は1日のうちに約3万5000回もの決断を下しているそうです。

例えば、朝起きるとき。私は目覚まし時計よりも少し目が覚めてしまうのですが、その時に起きてしまうのか、ギリギリまで横になっているのか、というところでまず一つ目の決断をしているのです。起きてからも、先に顔を洗うのか、それとも先にトイレに行くのか、といった調子で、いつものルーティンと思っていることでも、意外と判断の余地があることも多いのです。

それから、多くの人が悩むのは、服装ではないでしょうか。制服でない限り、どのトップスとどのパンツを合わせるのか、というコーディネートの問題に、それに合わせて肌着や靴下、靴やカバンまで変える必要のあるときもあります。それに加えて、今のような季節の変わり目だと、この格好で暑くないかとか、羽織ものがいるんだろうか、という気温のことまで考えなくてはいけません。今日の自分のスケジュールと天気予報を交互ににらめっこしながら、自分の持っている服たちとも相談しなくてはならないのです。

こういった煩わしさを解消するために、スティーブ・ジョブズは毎日同じ黒いタートルネックを着ていたという逸話がよく知られています。私も全く同じではありませんが、冬は無印良品の首だけ綿混というタートルネックセーターに出会って以来、8割の日はそのセーターを愛用しています。

ジョブズのように、決断疲れを起こさないためには、他にどんな方法があるでしょうか。

洋服に関していえば、朝のバタバタする時間に選ぶことは避ける、ということができるでしょう。どうせ考えなくちゃいけないなら、前日のゆとりのある時間帯にしておくというものです。

他にも、家事や仕事の中で、ルーティン化できるものは効率良くルーティンを組むことが考えられます。いつもやっていることを書き出してみて、今の効率を見直すことから始めてみましょう。ルーティン通りにいかなくても良い、という余裕を持たせた組み方がいいかもしれませんね。

また、全ての選択肢を考えようとしないというのも良いでしょう。ひょっとしたら、もっと良い方法があるんじゃないか?と考え出すときりがありません。自分の人生や生活にとって、大切なことであれば時間をかけて考えて欲しいですが、大して重要でもないことに対して考える時間はもったいないです。重要度の低いものは目に入ったものから選ぶとか、右、左、右…といったように機械的に選ぶ、という方法も良いと思います。

抑うつ状態にある方の中で、スーパーマーケットへ行くのが辛いという声をよく聞きます。スーパーでは、色んなものが所狭しと陳列されていますし、そのどれもが購買意欲を高めるために工夫されています。スーパーに行く前に買うものを決めていって、その中でも一番最初に手に取った物を買う、などすれば、選ぶ負担を少しは減らせるのではないでしょうか。

インターネットによって情報過多の時代を生き抜くために、重要度の低いものの選択にエネルギーを奪われないように。自分にとって大切なことに、皆さまの有効な時間とエネルギーを使えますように。

 

MEDI心理カウンセリング大阪

公認心理師・臨床心理士 可児

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